議員報告・人間万事塞翁が馬

農産物加工施設のその後
令和2年7月29日、農産物加工施設検討特別委員会は議会に付託された案件を審査報告書として提出しました。原文のまま紹介します。

執行者の提案通り農産物加工施設は、7月末日を持って村との賃貸契約を解除し、使用機材については譲渡し、今年度中においては、今の場所で村民が希望すれば使用できるような体制作りを構築すること。
なお、今後も村民の6次産業化のあり方及び支援について執行者は引き続き努力すること。

※ 執行者とは、村つまり赤井川村自治体を意味します。

提出された報告書を持って議会で審議され賛成6反対1で賛成多数で可決されました。
尚、反対に回った能登議員は、加工施設の契約解除について反対するものではないが、使用機材に対し村の財産を軽く扱うことに疑念があり、広く住民の声を聞くべきではないか。という討論を行いました。

この決定を受け、長い時間をかけて作り上げた農産物加工施設も、多額の損失を残し終了することになりました。

では、いったい何故こんなことになったのでしょうか・・・?

農産物加工施設は遡る事2017年4月、9名で構成された赤井川村農業未来推進会が村長当てに提出した要望書からスタートします。
要望を受け議会は「陳情審査特別委員会」を設置。その後、三回にわたる長い審議の上、要望を「否決」することにしました。
当時の模様は議事録を何度も読み直しましたが、かなり要望を出した未来推進会と、要望を受けた産業課との想いの食い違いを感じる内容だったように思います。
「否決」されたものの附帯要件により継続的協議が行われることなり、翌2018年の一般予算に計上されることになります。
2018年の6月に機材導入事業に約842万円、施設改修事業に約797万円 合計約1640万円の費用を充当し、12月に保健所から営業許可を待って、農産物加工施設は稼働を始めます。

しかし、途中で赤井川村農業未来推進会のメンバー離脱。新たな利用する会員も増やすこそができず、稼働数も数える程で2020年3月未来推進会は加工施設運営に係る活動停止を申し出ることとなります。

ホント簡単に経過をかきましたが、2019年に議員になったものにとっては「何でこんなことになったのか?」さっぱり状況がつかめませんでした。

私が加わった時、加工施設は既に村に譲渡され、使われなくなった施設の利用方法を検討する場でした。
新たに赤井川村農産物加工施設検討特別委員会を立ち上げ、いらなくなった加工施設をどうするかと言う議論が始まりました。

もう一度、加工施設に係った費用を整理しますね。
機材導入費が約842万円。施設改修費が約797万円。それに運営事業費として50万円、合わせて1690万円が加工施設を立ち上げるにかかった費用。
施設は、元漬物食堂の跡地で、リース料が月額約8万5千円かかります。それに暖房費と除雪代です。

これだけ村のお金を当てて「やめた!」はないよね。
委員会では施設や機材を有効的に利用する方法を模索しました。このまま維持する案や、機材だけでも移動して新たにスタートアップ事業ににつながる加工施設を作る案などが検討されましたが、決定的な判断につながったのが、「住民の利用者がいない」という現実でした。更に追い打ちをかけるかのように、村長からは「農産物の加工(6次産業化)についてはこれからも支援していきたいが、村が加工施設を維持していく気はない」と意見が出され。
個人的には残念な思いに後ろ髪を引かれながら加工施設を手放すことに賛成しました。

6次産業化への一般質問、9月定例会の村長の答弁にもあった通りマンパワーが不足しているというのはまさに「利用者がいない」という現実から来ていると思われます。
審査報告書の最後にある「今の場所で村民が希望すれば使用できるような体制作りを構築すること。」とは、せっかくの機材を一人でも多くの人に、一回でも使って貰いたいという願いがこもっていますが、
7月以降の利用者がひとりもいない現状を勘案してみても、マンパワーの不足はわかる気がします。

ここからが私見になりますが、ではなぜこんな不必要な施設ができたのでしょうか・・・・?

農産物は安いのです。――――「メロン1個1000円なら高いですか安いですか・・・?」
北海道のスーパーでメロンは980円前後で売られていることが多い。50メートルのハウスで120苗作付けし、一つの苗から4玉(慣行栽培)収穫して480玉。
一個1000円で消費者が買ってくれたとしても48万円にしかならないのです。そこからスーパーの取り分、市場の取り分、農協の取り分、箱代、肥料代、苗代を引くと20万以下でしょうな。
たまに、560円なんかでメロンが売られているのを見ると腹が立ちます。多分農家は一円も利益が出ないでしょう。
そんなことから加工品を作って安定的(原材料は生み出すことができるので)に収入を増やしたいと言うのが農家の根本にあります。
でもね。
「自分たちのリスクを伴わない機材(施設)から、心のこもった商品が生まれるでしょうか・・・?」
なけなしのお金で買ったミキサーなら大事にオリジナルジュースを作るのに使うでしょう。もし、壊れたとしても部品を買い足してでも使うに違いありません。
一方、何かの抽選で当たったミキサーは頂いた時に何度か使って棚の上にあげられるだけです。万が一、壊れでもしたらゴミとして粗大ごみに捨てられることでしょう。
そのことを8名の要望者が5名離脱した時点で気づくべきだったのです。――――「いや!気づいていたのかもしれませんね」
それでも止められなかったのは、自分では何もせずに文句ばかり言う地域の有力者の力、見えざるプレッシャーに踊らされたのかも知れませんな。
まぁ、根拠はありませんが、そのような事例は色んな市町村にあるようです。
企業はローリスクハイリターンを追求するもの。でも、ノーリスクで成功した事例はほとんどないのです。

元漬物食堂あとにできた農産物加工施設、今年の7月、所有者であるシリベシ緑化とのリース契約を強引に解除しました。
その代償として、中にある加工機材の無償譲渡です。
――――「そんなもったいない!」
と思うのが正常ですが、一度使われた調理器具はリサイクル業者に見積もりをとっても二束三文。それでも、持ち続けるということになると、施設の家賃(リース代)に、冬は暖房費と除雪代が上乗せになります。
利用される予定のない施設は死んだ施設。残念な結果ではありますが、これ以上の損失を出さない為に致し方ない結果だと思います。

年度内は加工場の利用は可能です。(冬場の利用は要相談)
村民の方は知っていると思いますが、調理機材は支援センター内に色々とあり、試作品を作る程度なら可能だと思います。是非、多くの産品ができることを期待しつつ、農産物の加工施設の譲渡についての報告はこれにて終了となります。
尚、踏み込んだ内容や、疑問、質問は受けますので何かありましたらご連絡ください。